読書メモ:2014年9月

エピジェネティクス 新しい生命像をえがく 仲野徹

 現在の生命科学の教科書はとても分厚いものになっており、生物学の全体像あるいは一分野でさえも理解しようと思えばそういう本を何冊も読まないといけない。そういう中で本書はエピジェネティクスというとても幅広い分野について、とてもうまくまとめているように思った。新しい分野の知識には、真実かどうかあやふやな内容も含まれてしまうものだけれど、著者は最近の知見に言及しつつ、同時にあやふやなところにもきちんと言及していた。今度もどんどんと発展していだろうエピジェネティクスという分野についてわかりやすくまとまった本。

 

 

犬のココロをよむ――伴侶動物学からわかること 菊水健史、永澤美保

 菊水先生の名前が目に入ったので手に取りました。本書を読んで一番感じたのは、著者らは本当に犬を好きな人なのだなあということでした。犬が心を持つということは、犬とともに時を過ごしている人なら既に知っていることですが、それを科学的に証明しようとすると案外難しい。あるいは行動科学の本には、少し怜悧になり過ぎていて読んでいてなんだか面白くないというような本もあります。でも本書では、きちんと論理的になるべきところと、犬っていいよねという気持ちが区別されてまた両立されていたので、とても楽しい気持ちで読んでいられました。

 

 

貧困の克服―アジア発展の鍵は何か アマルティア・セン

 学びの多い本だった。”アジア的価値観”が”欧米的価値観”に対立するものとして論じられる時、果たして二つの価値観は本当によく定義された言葉なのか。本当にそれらはなにかのあるべき姿を指し示す言葉なのだろうか。そうではないと著者はいう。言葉とイメージに捉われずに私達が人間的に発展し、”潜在能力”をもって生きるためにはなにが必要かを考えていく。巻末の解説を読むと、センの思想というのは思っているよりもまだまだ広くて深いものらしいので、もう少しセンの著作を調べてみたいという思いを強く持った。

 

 

〈1分子〉生物学―生命システムの新しい理解

 この本は2004年に出版された本なのだけど、一流の人達は10年前にこういうことを考えていたのかと思って読むと、とても刺激的だった。興味深かったのは、細胞内であるタンパク質が非特異的に他のタンパク質と結合しているとき、その非特異的な結合が、タンパク質の発現におけるノイズの減少に実は役立っているのではないかということを調べた研究の話だった。そういう着想の持ち方はすごいなあと思う。

 

 

進化のダイナミクス 生命の謎を解き明かす方程式 Martin A. Nowak

 興味のあるところを虫食いで読みました。生物の振る舞いを考えるとき、ある分子の動き方がある形質と関係しているという研究だけでは、分からないところがあるんだよなあと感じて、ここ最近数理生物学に興味を持っています。本書には難しい数学もほとんど出てこなくて、(主に)生物における進化について分かりやすく書いてありました。AIDSやがん、言語の進化など興味深い章が沢山ありました。個人的には、AIDSウイルスと宿主の免疫系の関係を数式で表したときに、AIDSの臨床像がどう解釈されるかという話はとても興味深かったです。

 

 

青年の大成 安岡正篤

 大学に通っていたときに、著者の本を読んで心が洗われたような気持ちになった。著者の文章から離れて久しかったけれど、あるいはだからこそなのか、本書を読んで、背筋を伸ばされるような思いにまたなった。難しく書こうと思えば、もっと難しく書けるのだろうけれど、そうはせずに平易な言葉で、人間はどうあるべきか、とくに若者はどうあるべきかということを、様々な英哲達を紹介しながら述べていく。日常において向上心がなければ、心は堕落していく一途だと思うが、本書はそういう気持ちを取り去ってくれるような本である。

 

 

(この記事は、以前、読書メーターに記録していたものです。)

 

スポンサーリンク






コメントを残す