読書メモ:2014年10月

ジュゴンの上手なつかまえ方――海の歌姫を追いかけて 市川光太郎

 これはとても面白い本。ジュゴンでバイオロギングするためには、まずジュゴンに機器をとりつけなければいけない。でも、動物を刺激したり傷つけるようなやり方は当然出来ない。じゃあどうするか。著者らを含めたジュゴンの研究者は、ちょっと思いつかないやり方で、ジュゴンをつかまえる。勿論それは、ジュゴンも人も傷つかないやり方。ジュゴンのつかまえ方、ジュゴンのおしゃべり、そして人はどうやってジュゴンと生きていくべきなのか。ジュゴンに魅せられた著者が、それらについて、とても気持ちの良い文章で書いた本だなと思いました。

 

 

百年千年の薬たち―驚きと意外 薬と人の出会いの物語 野村隆英

 色々な薬について、それらがどうやって発見されてきたが分かりやすく書かれていました。薬理学書ではないので、詳細な記述は勿論ないですが、紹介されている薬について、それらがどうやって効果を発揮するのか、例えば薬に興味を持ち始めた人が読んだと仮定しても、とても分かりやくまとまっていると思いました。薬について考えるときには、動物実験についても言及されなければならないと思いますが、少しではありますが、そういうところにも触れられていたので、読んでいて著者の言葉が入ってきやすかったです。

 

 

くすりの発明・発見史 岡部進

 薬の発見に興味があったので読んでみました。麻酔、パーキンソン病の薬、抗アレルギー薬、強心薬、血液凝固薬、抗マラリア薬などの発見について、発見や発見者のエピソードがよく紹介されていました。薬の作用などの小難しい話もあまりなく、誰でも読みやすい内容の本だと思います。名前はどこかできいたことのある人達が、色々な苦労をこえて、薬の発見や医学上の発見を行ったのだというエピソードや、大きな発見を行った人がその後必ずしも幸せな生涯を送っているいうわけではないというエピソードは、とても興味深かったです。

 

 

科学者の卵たちに贈る言葉――江上不二夫が伝えたかったこと 笠井献一

 岩波科学ライブラリーにはこういう系統の本もあるのですね。一言でいうなら、とても勇気を与えられる本でした。実験が失敗したら喜びなさい、弟子を歯車にしてはならないなど、競争原理の元では拒絶されるようなことを過去におっしゃっていた先生がいらっしゃるというのは、とても興味深かったです。実験をする人には前向きさが必要だとよくききますが、読んでいるうちに、そういうような気持ちになれるような本でした。

 

 

ヒトはなぜ難産なのか――お産からみる人類進化 奈良貴史

 岩波科学ライブラリー。うーん、正直にいうとなんだか中途半端かなと感じてしまった。もう少し生物学よりの本にするならそうすれば良いし、著者の専門である考古学よりにするならそうすれば良いし(あるいは医学より)。もしくは筆者が経験した疑問からどんどん深めていくとか。色んな分野をまたいで考えるのは、面白い考え方だし、そういう視点も必要なものだと思うけれど、どうしても章それぞれの内容が薄いような…。とはいうものの、興味の種をまくくらいがこういう本の役目だとするなら、それはそれで良いのかも知れないけど。

 

 

動物生理学―環境への適応 クヌート シュミット=ニールセン

 読みかけにして、時間が出来たときに読もうと思っていた本のひとつだったのだけれど、ようやく全体に目を通せた。本書に出会ってから何年も経過したけど、まだまだ本書から多くのことを学んでいる。本書は、生物が多様な場所で、想像を超えるようなやり方で生きているということを、本当によく教えてくれる。人が動物に魅かれる理由のひとつというのは、人の想像力を常に超えてくれる存在だからではないかと思う。本書は、そういったことを教えてくれるし、同時にまだまだ私達は動物達について知らないことだらけで、まだまだ動物達が私達に教えてくれることは沢山あるのだということも教えてくれる。一端この本を一周したところだけど、これからもまだまだこの本からは学んで、刺激を受けていくのだろうと思う。また、この本は訳書ということもあって、少し古めの内容だろうということもあるし、また、違う著者が書いた動物生理学の本も読んでみたいということもあるので、機会があればRichard W. HillらのAnimal Physiologyも読んでみたいなと思っている。

 

 

細胞寿命を乗り越える ES細胞・iPS細胞、その先へ 杉本正信、帯刀益夫

 これまで読んだ岩波科学ライブラリーの中で、一番かたい内容だなと思った。全く背景知識のない人が読んだら、分からないところがいくつかあるんじゃなかろうか。とはいうものの、中高校生くらいから年上の好奇心をよく持っている人が読むなら、適度に難しくて面白いかも。個体の寿命と細胞の寿命はどう違うの?、テロメアというのはなんなの?、がんと長生きはどう関係しているの?、ES細胞やiPS細胞ってなんなの?、っていうようなことに興味をもつ人は、読んてみるととても良い読書体験になると思います。

 

 

ラテン語のしくみ(CDつき) 小倉博行

 英語の実力をアップさせるにはラテン語を1年くらいみっちり勉強したほうがよいということを聞いて、第一歩として本書を選んだ。小難しさは全然なくて、読み進めるうちにラテン語文法のあれこれがなんとなく分かる。これからもうちょっと勉強するなら、何に気をつけなきゃいけないのかとか、どういうことを覚えなきゃいけないのかということが、とてもよく分かる本だった。語順よりはむしろ語尾の変化で、それぞれの単語や文章の意味が決まるということだったけど、そのあたりラテン語って面白いじゃんと思った。始めの一歩に最適な本だと思う。

 

 

50羽から5000羽へ―アホウドリの完全復活をめざして 長谷川博

 1950年〜2001年の間に、当初10~20羽とされていたアホウドリを500羽まで増やした著者の仕事はとても偉い。一夫一妻制で、毎年ひとつしか卵を産まないアホウドリを増やすというのはとても大変なことだっただろう。毛皮や、アホウドリが人間を怖れないということを理由に、乱獲され絶滅寸前まで追い込まれたアホウドリと、追い込んだ人間。一人の人間の熱意が絶滅危惧種を救いうるということを示した著者の生き様を知れる、とても良い本だった。

 

 

スズメ――つかず・はなれず・二千年 三上修

岩波科学ライブラリーが面白い。今回はスズメ。本書は写真も多めで、小さな子供が読んでも面白く読めるだろう。一方で、身近にいる鳥といっても知らないこと、よく分かってないことがまだまだあるのだなあと、大人が読んでも面白い。巻末に著者自身が書いている通り、少し内容に物足りないところもあるけれど、スズメに思いを馳せる契機になるような良い本でした。

 

 

(この記事は、以前、読書メーターに記録していたものです。)

 

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